「コーヒーでいいですか?」
少し落ち着いた自分自身を確認してからリビングを覗くと、央雅くんは壁一面に作り付けられてる本棚を興味深げに眺めていた。
何かを見つけたのか、動かない背中はただその場にじっと立つままに集中していて返事がない。
「あの…コーヒーで…」
どこか不自然にかたまっている後ろ姿にそっと近寄ってみても、私に意識も何も向けてくれなくて、近寄って見る横顔は、ただ何かを凝視したまま。
それまで私に向けていた飄々としていた雰囲気からは掛け離れている瞳の温度はぐっと下がったように見えて、何も言えなくなってしまった。
さっきまで、確かにどうして私の部屋に央雅くんがいるのかも理解できないし、まともに自分を保つのでさえ必死だった。
落ち込んでいた気持ちが浮上した途端に慌ただしくかき乱す央雅くんの存在が不思議だったけれど。
それでも、央雅くんがこんなに醒めた表情はしていなかったと思うし、私に対しては受け入れてくれようとする穏やかな感情を確かに感じていた。
だから、そんな央雅くんが突然豹変したように冷たい表情をしている理由がわからない。
声をかけてもいいのかどうか、このままじっと待っていた方がいいのか。
央雅くんの隣であたふたしていると。
「芽依ちゃん、だよね」
じっと何かを見ながら低い声で、央雅くんが私に聞いた。
央雅くんの視線の先には、銀色のフォトフレーム。
本棚に飾っている写真には、振袖を着ている私と、その振袖の持ち主の…芽依さん。
着慣れていない着物に照れながら笑っている私の写真をじっと見ている央雅くん。
あ…見ているのは、私じゃないか…一緒に写っている芽依さん…なのかな。
写真の中で私の横に立つ芽依さんは、産後しばらくのんびりしている最中にも関わらず私の成人式に来てくれた。
少し落ち着いた自分自身を確認してからリビングを覗くと、央雅くんは壁一面に作り付けられてる本棚を興味深げに眺めていた。
何かを見つけたのか、動かない背中はただその場にじっと立つままに集中していて返事がない。
「あの…コーヒーで…」
どこか不自然にかたまっている後ろ姿にそっと近寄ってみても、私に意識も何も向けてくれなくて、近寄って見る横顔は、ただ何かを凝視したまま。
それまで私に向けていた飄々としていた雰囲気からは掛け離れている瞳の温度はぐっと下がったように見えて、何も言えなくなってしまった。
さっきまで、確かにどうして私の部屋に央雅くんがいるのかも理解できないし、まともに自分を保つのでさえ必死だった。
落ち込んでいた気持ちが浮上した途端に慌ただしくかき乱す央雅くんの存在が不思議だったけれど。
それでも、央雅くんがこんなに醒めた表情はしていなかったと思うし、私に対しては受け入れてくれようとする穏やかな感情を確かに感じていた。
だから、そんな央雅くんが突然豹変したように冷たい表情をしている理由がわからない。
声をかけてもいいのかどうか、このままじっと待っていた方がいいのか。
央雅くんの隣であたふたしていると。
「芽依ちゃん、だよね」
じっと何かを見ながら低い声で、央雅くんが私に聞いた。
央雅くんの視線の先には、銀色のフォトフレーム。
本棚に飾っている写真には、振袖を着ている私と、その振袖の持ち主の…芽依さん。
着慣れていない着物に照れながら笑っている私の写真をじっと見ている央雅くん。
あ…見ているのは、私じゃないか…一緒に写っている芽依さん…なのかな。
写真の中で私の横に立つ芽依さんは、産後しばらくのんびりしている最中にも関わらず私の成人式に来てくれた。

