揺れない瞳

そっと気付かれないように、央雅くんの体から距離を作ろうとして体を後退させながら、膝から下りてみようとしてみるけれど。

不自然なその動きに、央雅くんの意識は私へと戻ってきた。

一瞬にして面白がるような表情を作った央雅くんと目が合って、何かを言おうとするように唇が動き出したけど、言葉が聞こえる前に

「シュ……シュークリームっ……食べたいなっ」

裏返った私の声で、央雅くんが話そうとするタイミングを潰してみた。
そして、急いで央雅くんの膝から下りてキッチンへと。

私の素早い動きに驚いてる央雅くんを放っておいたまま、熱い体を冷ますように、キッチンに入った途端、大きく息を吐いた。

心身共に……殆どは心の部分……が疲れ切ったのを実感しながら、冷蔵庫に体を預けた。

一瞬だけ……休憩しなきゃもたない……。

全く慣れてない状況に、体はふらふらだ……。

今日一日で、少なくともここ10年は感じなかった人生の大きな波を味わった気がする……。