揺れない瞳

「やだ」

芽実さんの言葉に、はっと顔を上げると、あからさまに不機嫌そうな顔が目の前にあった。

「あのウェディングドレスを気に入ってるのもあるけど、結乃ちゃん、絶対にショーに出たら映えるって思うもん。
その見た目だけで女の子達は羨むだろうし、プロの手にかかってヘアメイクしてもらえば最強だよ。
何人もモデルを見てきた私が言うんだから、その通りなんだから」

瞬きもせず、かなり強い口調。
迷いのないその言葉は自信に満ち溢れている。
今簡単に思いついたんじゃなくて、流れるように話す様子からは、私が断るのを予想していたんだろうと思わせるものもあった。

私が断る事を簡単に受け入れてくれるとは思っていなかったけれど、こんなに頭から拒まれるとは予想外だ。

それまでの明るく軽やかな芽実さんからは一転、自分の思いを必死で押し通す経営者の顔になっていた。

何にもぶれない強さ、そして信念。
単なる美人なデザイナーっていうだけじゃない、心が強い女性。

これが、芽実さんの本来の姿なんだろうな。

「結乃ちゃんには自分の姿が見えてないのよ。
モデルになりたくて努力している女の子達が望むものの殆どを持ってる。
顔の綺麗さやスタイルの良さはもちろん、結乃ちゃんだけが持っている雰囲気なんて、観客をひきつけるには十分だもん。
私を信じてついてきてよ。ね?」

ね……って言われても。どうしよう。

「あのウェディングドレスは再婚した父の結婚式で、奥さんが着てくれることになったんですけど。だから、無理ですよね……」