揺れない瞳

「話って、何?」

「えっと、あの、ですね。ショーなんですけど、私……」

じーっと見つめてくる芽実さんと奏さんを前にして、しどろもどろ。
俯きながら、どう言えばいいのか、あらゆる言葉を探していた。

ショーの出演を辞退したい。

たったそれだけを言うだけなのに、人から頼まれた事を拒むなんて慣れていない私には、かなりの難仕事。

小さな頃から、成り行きに任せて生きるしかできなかった私が抱えている後遺症かもしれない。
私を求められればそれに応えるし、私から去っていくのならば追いかけず。

全てを安易に受け入れて、その流れに身を置くしかなかった。
そうしなければ施設では生きていけないし、誰も頼れる人がいなかった私には、それが心を守る唯一の手段だったから。

以前の私なら、嫌々ながらもショーに出る事を受け入れて、どうにかこなしていたかなと思う。
敢えて拒んで、周囲の流れに逆らうなんて事、しなかったと思う。
敵を作らない生き方しか私にはできなかった。
同時に、味方を作る努力もしなかったけれど。

そんな生き方が当たり前だった私には、周りが望んでいる空気を読み取って合わせる事が当たり前。逆らうなんて論外だった。

だから、芽実さんからのオファーを、どんな言葉で断ればいいのか、よくわからなくて悩んでしまう。

芽実さんが望む事を受ける方が簡単で、楽に違いない。
彼女の思いを受け止める方が、敵を増やさなくていいに違いないけど。

どうしてもショーには出たくない。

せっかく私を気に入ってくれて、仲良くしてくれているけれど。

「私、ショーには出たくない……んです」

生まれて初めてかもしれない。

「すみません」

ある意味、人との別れを覚悟してそう言うなんて、生まれて初めてかもしれない。