揺れない瞳

「は?見せつけてるってどういう意味だよ」

憮然とする父さんは、訳が分からないのか更に拗ねてるし、正直かわいく見えたりもする。

「あのね、私にとっては単なる父さんだけど、愛子さんにとっては『圭』って呼びすてにする一人の男性なんだなって気付かされただけで、見せつけられてるって感じるんだからね」

その言葉に、はっと私を見る愛子さんは、しばらくすると顔を真っ赤にして俯いた。
きっと、『圭』って呼んでいたことに気づいてなかったんだろう。
照れ臭そうにしている様子は30歳には見えない。
ただでさえ若く見えるのに、もっと若く見える。

私の姉だと言っても通じそう。

「それに、父さんだって、私といる時には緊張してわがままなんか全然言わない雰囲気満載で、社長さんっていうオーラ全開なのに、愛子さんには子供みたいにわがまま言ってる。

それって、私からみたら見せつけられてるって意味なんだよ。

だから、私と央雅くんにおかしな言いがかりをつけるのはやめてね」

さっき聞かされた愛子さんの強気な口調に感化されたのか、普段の私では決して言わないような気持ちをはっきりと口にしてしまった。
いつもなら、心におさめたまま笑って流す感情なのに、結構はっきりと言っちゃったよね……。

既に言ってしまって、どうしようもないけど、私、言い過ぎたかな。
不安げに央雅くんを見上げると、にやりと笑っている顔を向けられた。
悪戯を見つけた悪がきのような顔で、何かを企んでるみたいな顔。

えーっと……。私、どうしよう。

「言い過ぎた……よね?」

恐る恐るそう聞くと、央雅くんは首を横に振った。

「いや、上等上等。いいんじゃないの?……親子なんだから」

優しく私の頭を撫でてくれた。