揺れない瞳

「圭がずっと苦しんでたのは側で見てたから知ってるけど、それは自業自得でしょ?奈々子さんの言葉を疑わなかった圭の責任。
誰がどう見てもこんなに圭と結乃ちゃんは似てるのに、どうしてその事から目をそらしたの?
圭が苦しんでいたのは圭の責任なんだからちゃんと受け入れなきゃ。
それに、これからだってその苦しみはずっと続くんだよ。
だって、結乃ちゃんは圭以上の悲しい時間を過ごしてきたんだから。
今頃うじうじ被害者ぶって愚痴るなんておかしいよ。

……ね、結乃ちゃん」

ね?

って私にふられても。
困る。

思いを言い切った愛子さんは、私に優しく笑いかけると

「結乃ちゃんも、思ってる事言っていいんだよ。
最近の圭は結乃ちゃんを自分の側におきたくて勝手なことばかり言ってるからね。
結ちゃんの気持ち、言っていいんだよ」

諭すように、そう言ってくれた。

私と央雅くんは、愛子さんの勢いある言葉に気圧されて顔を見合わせた。
無言で交わす視線。
ふたりして苦笑しながら小さく頷くと、それだけでなんだかホッとする。

央雅くんも私も、愛子さんに驚いて、戸惑って、そして感謝してる。

ふふふっと俯くと、その途端に父さんの低い声が響いた。

「なんだよ、見せつけるなよ」

「は?父さん、何言ってる……」

「ふん。どうせ俺は父親失格だからな。結が誰と仲良くしようが結婚しようが見てるしかできないもんな。だからって、俺の目の前で見せつけるなよ」

……ふっきたのか。
拗ねている自分を隠そうともしない父さんに、私も央雅くんも、そして愛子さんも大きくため息をついた。

「……見せつけてるのは父さんと愛子さんでしょ?」

本当、手のかかる父親だ。