「戸部先生が言ってたよ。俺の四人目の息子と仲良くしてくれって。
央雅くんの事、かなり気に入ってるんだな」
低い声は、相変わらず不機嫌。央雅くんをちゃんと見ようともしないで呟く父さんは、手酌でビールを飲みながらもちっともおいしそうに見えない。
「もし結と央雅くんがダメになっても、戸部先生の事務所の弁護士を紹介するからって言われたよ。……全く、結を独り占めしようとしてるの丸わかりだろ」
ぶつぶつ呟いている父さんは、小さく息を吐くと、悔しそうに私を見た。
「え……何?」
その切羽詰まった顔に、私は思わず体を後ろにそらしてしまった。
「夕べも言ったけど、悔しい。結は俺の娘なのに、たった一人の俺の娘なのに。どうしてみんな俺から結を取り上げようとするんだよ」
「父さん?」
口ぶりもしっかりしていて、表情にも崩れたところは見えない。
決してお酒に酔ってるわけじゃないと思う。
でも、父さんがそんな言葉を口にするなんて信じられなくて、どう言葉を返していいのかわからない。
「奈々子だって、嘘までついて俺から結を取り上げて……それにのっかってしまった俺も悪いけど。それでもどうして俺から娘を取り上げるんだ?」
「圭、結乃ちゃん困ってるよ?」
戸惑う私に気遣って、愛子さんが父さんにそう言ってくれるけど、父さんは拗ねたようにぷいっと顔を背けた。
そんな子供じみた態度に、愛子さんも顔をしかめた。
なんだ、仲良しなんだ。ふーん。
父さんのことを『圭』って呼び捨てで呼んでるし。
歳の差なんか感じないくらいうまくいってるんじゃない。
「戸部先生だって、自分は施設に行って結と自由に会ってるのに、俺には結を混乱させるなって言って会わせてくれなくて、俺はいつも施設の外から結を見てるだけだった。
で、ようやく大学生になって結の生活に関われるようになったと思ったら彼氏ができて、また俺から結をかっさらおうとしてるし。
どれだけ俺と結は離れて暮らさなきゃならないんだ?」
「仕方ないでしょ。理由はどうであれ、圭は結乃ちゃんを見離したんだから」
……は?
愛子さん、今すごい事言いましたか?
事実だとはいえ、あっけらかんと言い切った愛子さん、ふふんと笑ってるし。
ある意味、父さんの事よくわかってるのかもしれない。
央雅くんの事、かなり気に入ってるんだな」
低い声は、相変わらず不機嫌。央雅くんをちゃんと見ようともしないで呟く父さんは、手酌でビールを飲みながらもちっともおいしそうに見えない。
「もし結と央雅くんがダメになっても、戸部先生の事務所の弁護士を紹介するからって言われたよ。……全く、結を独り占めしようとしてるの丸わかりだろ」
ぶつぶつ呟いている父さんは、小さく息を吐くと、悔しそうに私を見た。
「え……何?」
その切羽詰まった顔に、私は思わず体を後ろにそらしてしまった。
「夕べも言ったけど、悔しい。結は俺の娘なのに、たった一人の俺の娘なのに。どうしてみんな俺から結を取り上げようとするんだよ」
「父さん?」
口ぶりもしっかりしていて、表情にも崩れたところは見えない。
決してお酒に酔ってるわけじゃないと思う。
でも、父さんがそんな言葉を口にするなんて信じられなくて、どう言葉を返していいのかわからない。
「奈々子だって、嘘までついて俺から結を取り上げて……それにのっかってしまった俺も悪いけど。それでもどうして俺から娘を取り上げるんだ?」
「圭、結乃ちゃん困ってるよ?」
戸惑う私に気遣って、愛子さんが父さんにそう言ってくれるけど、父さんは拗ねたようにぷいっと顔を背けた。
そんな子供じみた態度に、愛子さんも顔をしかめた。
なんだ、仲良しなんだ。ふーん。
父さんのことを『圭』って呼び捨てで呼んでるし。
歳の差なんか感じないくらいうまくいってるんじゃない。
「戸部先生だって、自分は施設に行って結と自由に会ってるのに、俺には結を混乱させるなって言って会わせてくれなくて、俺はいつも施設の外から結を見てるだけだった。
で、ようやく大学生になって結の生活に関われるようになったと思ったら彼氏ができて、また俺から結をかっさらおうとしてるし。
どれだけ俺と結は離れて暮らさなきゃならないんだ?」
「仕方ないでしょ。理由はどうであれ、圭は結乃ちゃんを見離したんだから」
……は?
愛子さん、今すごい事言いましたか?
事実だとはいえ、あっけらかんと言い切った愛子さん、ふふんと笑ってるし。
ある意味、父さんの事よくわかってるのかもしれない。

