揺れない瞳

そして、結局央雅くんも一緒に父さんの家を訪ねることになった。
央雅くんが強く望んだ事も大きいけれど、やっぱり父さんの家に行くというのはかなり不安だったから、央雅くんが気を遣ってくれたんだと思う。

「すげ、やっぱ社長って感じの家だな。俺んちも両親医者だからそれなりの暮らしをさせてもらってるけど、比べものにならないな」

手土産を持って訪ねた父さんの自宅は、閑静な高級住宅街という形容がぴったりな場所にそびえている大きな豪邸。

まさしく社長の自宅という感じ。

敷地を取り囲む石壁は延々と続いているし、玄関の門扉から家までは相当距離がある。
芝生も見えるし大きな木もたくさん並んでいて、圧巻だ。

「そりゃ、結乃の為にマンションの一つやふたつ、買えるよな」

央雅くんのからかうような声に、小さく頷いた。
私が住んでいるマンションなんて、父さんにしてみれば簡単に買えてしまうものなんだろう。

そう感じて、複雑な気持ちになった。
父さんって、私が思っていた以上にすごい人なのかもしれない。
ううん、きっとそうなんだろうな。

私と央雅くんは、しばらくその場に立ち尽くして、その外観にため息をついた後、

「じゃ、行こうか」

どちらからともなく呟いて、ピカピカに光っている銀色のチャイムを鳴らした。