結乃が俺の部屋に来たのは、日が暮れた頃。
父親との再会がどんな展開をたどるのか予想できなかった結乃は、会いに行く前、『父親と別れた後会えるかどうかわからない』と不安げに話していた。
そんな不安を抱く結乃の気持ちがわからないわけではなかったけれど、とにかく連絡だけはするように納得させて送り出した。

『私よりも父さんの方が緊張してたよ』

そう軽やかに電話をかけてきた結乃の声を聞いて、俺も緊張感が解けてほっとした。

結乃が抱えている寂しさが、ただ一度父親と会っただけで簡単になくなるとは思えないけれど、その寂しさ以上にこれからの幸せな未来を期待する事ができる何かを掴んでいたのなら、それだけで今日の結乃が奮い起した勇気には意味がある。

『会いたい……』

普段ならそんな真っ直ぐな感情を口にする事はない、結乃の言葉は強力で、今すぐこの腕に抱きしめたいと思わずにはいられなくなった。

俺が結乃の家に行こうかと思ったけれど、結乃がいる場所は俺の自宅からすぐだった。

そしてその電話から5分後には、俺は腕の中に結乃を閉じ込めて彼女の体温を感じていた。