揺れない瞳

その後、二人でランチを食べて食後のデザートとコーヒーを味わっていると、

「本当、芽依が言ってたとおり可愛い女の子ね」

聞きなれた声に、はっと振り返ると、にやにやと笑う両親が立っていた。
俺の背中越しに結乃を見つめる瞳は好奇心に溢れていて、今にも尋問が始まりそうな予感がする。

「二人して何やってるんだよ」

「何って、あなた達と同じでランチを食べに来たんだけど?
あっちの席でおいしくいただきながら、あなた達が幸せそうに見つめ合ったり囁き合ってるのをゆっくり見てたっていうのが正しいかな」

くすくす笑ってからかう母さんは本当に楽しそうで、隣にいる父さんも、つられるように、にやにやとしている。

「は?俺らの事見てたのかよ」

「そうよ。今日はあなた達みたいな恋人同士がお店にはたくさんいるから、こっちが照れちゃうわね。やっぱりクリスマスっていいわね」

ね?と父さんに問いかける母さんに、同じように笑顔で頷く父さん。
二人の仲の良さだって、見慣れてるとはいえ照れるのに。
結婚してかなり経つのに、人目を気にせずによくもこんなに仲良くしてられるよな。
嬉しそうに腕まで組んで。
……羨ましいだろ、全く。

「あ、あの……不破結乃と申します……央雅さんとは……あの」

両親に呆れたため息をついていると、突然結乃の声が聞こえた。
震える声から、緊張感が俺たち三人に伝わってくる。
席を立って、頭を下げる結乃の両手は胸の前で合わせられて色が変わっているのに気付いた。
そんなに強く握るほど緊張しなくてもいいのに。
俺の両親を前にして、不安げな結乃がかわいくて、しばらくこのまま見ていたい気持ちもわいてくるけれど、それはかわいそうだと思い直して両親に紹介する事にした。
きっと、こうなる事を見越して両親も声をかけてきたんだろうし。

「俺の恋人の不破結乃。最近ようやく手に入れた大切な人なんだ、邪魔するなよ。特に母さん、結乃がかわいいからって、振り回すような事はしないでくれ」

「えー、振り回すってどういうことよ」

「結乃にまとわりついて連れまわしたりすること。
母さんが気に入るタイプだってわかってるから、できればまだ紹介したくなかったんだよな……」

苦笑する俺と、がっかりと肩を落とす母さんを交互に見ていた結乃は、

「あの、……よろしくお願いします」

躊躇いがちに頭を下げて挨拶をした。


「こちらこそ、これからよろしくね。央雅、頑固で大変だけど、根はいい男だから大切にしてもらいなさいね」

ふふっと笑う母さんの穏やかな声音に、顔を上げた結乃はほんの少しだけ安心したように見えた。

……言われなくても、これでもかっていうくらいに大切にしてやる。
そう心の中で呟いた。