揺れない瞳

「そっか。じゃ、俺もはめようかな……」

結乃がそれを望むのならそうしようかと、あっさりとそう告げると、嬉しさを隠す事なく大きく笑った結乃。
手元に並ぶ指輪に視線を戻すと、さっきまでよりも真剣に選び始めた。
どの指輪にも小さなダイヤが輝いている。
宝石に詳しくない俺が、唯一知っているのがダイヤモンド。

『永遠の愛』

という別名も気に入って、とにかくダイヤが綺麗に輝いている指輪をいくつか選んだ。
そのうちの一つが気に入ったのか、頬を緩ませて、嬉しそうに手に取った結乃が、確認するように俺を見た。

「それが気に入ったのか?」

「うん……。すごく綺麗で、私には似合わないかもしれないけど」

結乃が手にしているのは、プラチナのリングに、小さなダイヤが三つ並んでいる指輪。あっさりとしたデザインはまるでマリッジリングとしても通用しそうな指輪だ。
もっと派手なデザインの指輪も並んでいるのに、予想通りというか、やっぱり結乃が選んだのは穏やかなデザイン。

「結乃が気に入ったのなら、それにしよう。サイズは?測ってもらう?」

「あ……うん。多分、7号だと思う……」

恥ずかしそうにそう呟くと、結乃は店員の女性に左手を差し出した。
当たり前のように、薬指にサイズを測るリングを通す店員に照れている顔は真っ赤だ。左手薬指に、結乃は俺のものだという証をつける為のこの時間が、予想以上に幸せな時間だと気づいて、ふっと息を吐いた。

今までの俺には縁もなかった新しい感情に包まれて、奇妙な気もするけれど、こういう時間を求める俺が、本来の俺だと、実感した。

「7号ですね。ちょうどありますので良かったですね。……男性用もございますが、ご用意しましょうか?」

「あ、お願いします」

あっさりとそう言った瞬間、結乃は俺を見上げて、

「……お揃い……でいいよね?」

不安げに、そして照れ臭そうに聞いてきた。

「当たり前。一緒にはめるんだから、お揃いに決まってるだろ」

「……うん。『ひまわり』以外にもお揃いが増えたね」

ひまわりのお揃いのストラップ。
俺にとっては結乃との縁の始まりの大切なもの。今も二人の携帯に揺れている。

とても大切な、大切な、ひまわり。