揺れない瞳

「どうした?どれもいらない、は無理だから」

牽制の意味も込めて、そう言うと、結乃は小さく首を横に振った。

「違うの。私に指輪をプレゼントしてくれるのなら、私も央雅くんに指輪をプレゼントしたいの」

「は?……俺に?」

「うん」

小さく恥ずかしそうな結乃の言葉に、俺は驚くだけで何も言えなかった。
結乃の指に、俺のものだという証の指輪を贈る事しか考えていなかったから、まさか結乃が俺に指輪をプレゼントしたいと言い出すなんて想像もしていなかった。

「だめかな……?お揃いの指輪を二人ではめるのって……いや?」

たどたどしくも、どうにか俺をしっかりと見つめながら言う結乃の瞳からは、出会って以来初めてみる強さのようなものを感じる。
自分の感情は極力見せずにいる彼女に慣れていたせいか、今見せてくれている表情や瞳の光が新鮮に思える。

「……どうして?どうして俺に指輪して欲しい?」

強さを見せられた俺には、何故か意地悪な気持ちがわいてきた。
結乃から感じる強さに甘えて、ほんの少し、楽しませてもらってもいいだろ?

「俺が指輪をはめたら、結乃はどう思うんだ?ん?」

耳元でささやくと、途端に顔を真っ赤にして、黙り込んだ結乃。
そんな顔も、今まではなかなか見せてくれなかったのに、今日に限らず、少しずつ感情の起伏の増加と共に、新しい表情を見せてくれる。

そのたびに、俺は結乃に縛られていく。

そんな自分の力を、わかっているのか……?
きっと、わかっていないんだろうな。

「俺も指輪をはめると、結乃は嬉しいのか?」

俺が助け舟を出すように優しく促すと、結乃はホッとしたように口元を緩めた。

「すごく嬉しい……」