揺れない瞳


「先日選んでいただいたのは、こちらの指輪になります。
彼女さんの指は細いので、そんなに派手な装飾はない方がいいかと思いますが、どうですか?」

店員の女性が、にっこりと結乃に話しかける。
手元に置かれたいくつかの指輪を前に、結乃は何も言えずにただそれを見つめているだけだ。

「綺麗……」

ぽつりとつぶやいた結乃は、嬉しそうに口元を上げた。

「俺が気に入った物を取り置きしてもらったんだけど、結乃が他に気に入る指輪があれば、それを選んでいいから」

結乃は、並べられた指輪を恐る恐る手にとると、無言で見つめた。

「どれも、綺麗で素敵だね……。私にはもったいないけど、手に取ると、欲しくなっちゃうね」

ほんの少し切なげに聞こえる声は、震えていてか細い。
どこか遠慮がちな様子は予想通りだけど、どうしても結乃に指輪をはめたい。
せめて同じ大学に通っているのなら、結乃を近くから見ていられるけれど、そういうわけにもいかない状況で、俺が安心して毎日を過ごすためには、指輪という男よけが必要だ。

「もったいないなんて考えなくていいから、欲しい指輪を選べよ。
それで俺が安心するんだからさ」

遠慮しながらも、嬉しそうに指輪を順番に手にする結乃に言い聞かせた。
押し切ってもいい、無理矢理でもいい。

結乃が俺の切羽詰まった気持ちを受け入れてくれるのかどうか、緊張感も持ちながら結乃が指輪を選ぶ様子を見ていると、結乃の視線が俺に向けられた。

「ん?どうした?」

「あの、……指輪、なんだけど」