揺れない瞳

落ち着いた店内には、クリスマスプレゼントを選んでいるに違いないカップルが何組かいた。

俺は、結乃の手を引きながら、事前に確認しておいた陳列ケースへと向かった。
店の華やかな雰囲気に圧倒されているように心細げな結乃は、目の前に並ぶものを見て、とにかく驚いている。
まあ、予想通り。

「いらっしゃいませ。先日幾つか気に入られた指輪、またご用意しましょうか?」

指輪が並ぶ陳列ケースの中を見ていると、店員の女性が声をかけてきた。
今日の為に、一度下見に来た俺を覚えていてくれたらしい。

「……まだ、残っていますか?」

「はい。大丈夫ですよ。少しお待ちくださいね」

優しい笑顔を俺と結乃に残して、店の奥に行った店員を茫然と見ている結乃は、はっと気づいたように俺を見上げると

「指輪って……あの。私の……?」

恐る恐る、聞いてきた。
不安げに揺れる瞳を向けられて、自然と俺の顔も緩んでくる。
どんな顔をしていてもかわいいけれど、こんなに戸惑っている結乃にもぐっと心を掴まれる。

「結構可愛い指輪が多くて、人気があるっていうのもわかるな。
この前、見に来た時にも結乃に似合いそうな指輪いくつかあったから取っておいてもらったんだ」

「見に来てくれてたの?……央雅くんが、一人で?」

「そう。最初は照れ臭かったけど、結乃にプレゼントしようと思ってるから平気だったな」

男一人でジュエリーショップに入るなんて、あからさまに恋人へのプレゼントを選ぶと公言しているようで、照れ臭かったけれど、結乃が俺の恋人だと実感できるようで嬉しくもあった。
そして、お店の女性にアドバイスをもらいながら、いくつかを選んでおいた。