揺れない瞳


「このドレスを着た結乃を、他の男が見るのはむかつくけど。
俺の恋人は、こんなに綺麗な女だって自慢するのもいいかもな。

……多分、結乃をショーに引っ張り出すことを、芽実さんは諦めない。
結乃にとっては苦痛かもしれないけど、最近強くなってきた結乃なら、いい記念になるんじゃないか?」

「強くなってきた……?」

俺の言葉に反応した結乃は、まだ潤んでいる瞳を細めた。
そんな顔もかわいいって、自覚しろよな……。

「初めて会ってから、そんなに長くはないけど、このドレスが最終審査に残ってからの結乃は少し変わったような気がする。
まだ人見知りはあるけど、周りの男とも笑って話してるし自分の感情を出せるようになってきた……だろ?」

「あ……そうかな……」

「結乃が隠していたお父さんへの本当の思いに気づく事もできたし。
……強くなりすぎるのは複雑だけど、結乃は確かに強くなった。
きっとショーだって大丈夫だ」

だからと言って結乃が他の男と話す事を笑ってながせるほど、俺は器の大きな男じゃないんだけど。
今はそれを黙っておくくらいには、大人だ……。