揺れない瞳

ゆっくりと気持ちを伝えるなんて、無理だと気付いて、天井を仰いだまま、
口元を引き締める事もできず、こぼれる笑い声は甘い。

「俺が、どうして突然結乃を求めたかなんて、俺にもよくわからないんだ。
俺は、結乃が好きで、自分のもんにしたいって、それだけ。
今はそれだけだから」

こんな曖昧な言葉で納得させようとする俺の事を、身勝手だと思われても、結乃の不安を大きくしたとしても、今はどうにもできない。

とにかく、今は結乃をこの手に抱きしめて、愛したい。
出会ってからずっと、そうしたかった。
自分のものにして、誰にも触れさせたくなかった。
切なそうに俯く表情を笑顔にしてやるのは俺でありたかった。
結乃の恋人になりたくてたまらなかった。

それだけだ。

「結乃といつも一緒にいたい。……俺は、結乃に夢中なんだ」

こんな恥ずかしい言葉を、生まれて初めて口にした。
女の子に本気になって、追いかけた事なんてなかった俺には、なかなかハードルが高い言葉だけど、本気で惚れた女になら、ここまで簡単に言えると気づく。

冷めていると思っていた俺の心は意外に熱いと、気付いた途端に幸せな気持ちになった。