「そうか……。結乃ちゃんが自分で決めたなら、それでいいけど。
おやじに遠慮する事なんてないからな」
「はい。ありがとうございます。私……父に負担をかけるだけの存在だから、謝りたいし……」
こんな、湿っぽい話を、おいしい食事を前にするべきではないけど、私が最近受け入れた現実を、思わず口にしてしまった。私が目を反らしていた現実に、まだ戸惑っているようだ。
「あ、すみません、なんでもないです」
私の言葉に耳を傾けてくれる芽依さんと夏基さんに、慌てて笑顔を向けた。
自分が抱えなくてはいけない切なさを、二人に話して、楽しい雰囲気を壊すわけにはいかない。もちろん、央雅くんにだって、頼れない……。
「結乃ちゃんのお父さんは、負担になんて思ってないよ」
「……え?」
不意に聞こえた芽依さんの言葉に、視線を上げると、どうしようかと、困りながらもじっと私を見詰める芽依さんの視線とぶつかった。
いつもと同じ、優しい瞳だけれど、何かを言い聞かせようとする強さも伝わってくる。そのせいで、私も見つめ返す視線を動かすことができない。
「結乃ちゃんのお父さんは、ちゃんと、結乃ちゃんを愛してるよ。
だって、親だもん。子供を愛する事は、当然だよ」
「でも……」
愛されてるなら、どうして、私はずっと一人ぼっちだったんだろう……。
父も母も私に見向きもしないで、それぞれの人生を歩んできたのは、どうして?
そんな私の気持ちを読み取ったのか、芽依さんは、ふっと息を吐いて、穏やかに笑った。
「結乃ちゃんが、今まで一人で寂しく過ごしてきたことも含めて、お父さんに聞いてみたらいいよ。きっと、結乃ちゃんは愛されてるから」

