それからすぐに、夏芽ちゃんは大好きなお父さんに会えてほっとしたのか、気付けば芽依さんの腕の中で眠っていた。夕飯もお風呂も既に終わっていた夏芽ちゃんをベッドに寝かせた後、芽依さんと夏基さんも一緒に、夕食をいただいた。
さっきまでの、央雅くんとの二人きりの甘い雰囲気も、楽しかったけど、やっぱり恥ずかしかったから、今はこうして4人で食事をする方がホッとする。
隣に座る央雅くんを見ると、無表情のまま箸を動かしていて、決して嬉しそうには見えない。私と二人きりの時とは全く違うその表情からは、今の4人の状況が楽しくないって読み取れる。
それは、私と二人で食事をしたかったっていう気持ちの裏返しなのかと、ほんの少しだけ、自惚れそうになる。
そんな図々しいことを思い浮かべて、勝手に顔が熱くなる。
一人で色々考えて、一人で勝手に照れてしまう自分がおかしくなるけれど、すごく気持ちは温かい。
父親に会うと決めた夕方の事を思い出しても、これまでとは違って、動揺しない自分にも驚いてしまう。
そんな私の変化は、きっと、隣にいる央雅くんのおかげだ。
私を大切に思ってくれて、好きだと言ってくれた央雅くんの存在が、私の気持ちを強くしてくれたんだと思う。
私を愛していると、私を見つめる央雅くんの瞳は教えてくれた。
これまで何度も目にしていた、央雅くんの揺れない瞳からは、央雅くんの感情は何も伝わってこなかったけれど、ちゃんと、私に気持ちを伝えてくれた後は。
央雅くんの揺れない瞳から、『俺の言葉を、信じて』という気持ちが伝わってきた。
そして、その揺れない瞳が、私の気持ちを強くしてくれる。
だから、食事の合間に夏基さんが私に見せる心配そうな表情にも、
「大丈夫です。父とは、ちゃんと会います。戸部先生に会うよりも前に、父への気持ちは変わり始めていたから……色々話したいし、聞きたい事もあるから、会います」
笑って、答える事ができた。

