「私が行った時、芽依さんのお兄さん夫婦とお父さん夫婦も来ていたんで賑やかでしたよ。
…楽しそうでいいですね」
ふと思い出して、その時の騒がしい時間がよみがえると。
自然に口元も緩んでくる。
夏芽ちゃんを囲んで和やかに過ぎた時間は、私が経験した事のない優しい時間だった。
家族ってこんなに笑顔が溢れるものなんだって知って、少し切なくなったけれど。
気付いたら。
何となく自然に繋ぎっぱなしだった手。
央雅くんがぎゅっと力を入れたのがわかって、視線を上げると。
窓の外を流れる景色を見ながら、どこか固い表情の央雅くん。
何の想いも表さない瞳は悲しげにも見える。
「あの…」
小さく呟いて。
繋いだ私の手にも力が入ってしまう。

