揺れない瞳

「このウェディングドレスのサイズと、花嫁さんになる彼女のサイズは合うんでしょうか?」

「確実に、ぴったり合うよ」

即答で、自信ありげに言い切られてしまった。
そして、川原さんはふふんと笑って、

「サイズは大丈夫だし、彼女に似合うっていうのも心配ない。
まあ、彼女なら、どんなドレスを着たって似合うんだけどな」

真面目な顔と声で、そんな甘い台詞を投げられた。
一瞬、そのギャップに戸惑ったけれど、ほんの少し下がった目尻に浮かぶ彼女への愛情が見えると。

「……すごく、彼女の事が好きなんですね……」

私は無意識にそう呟くと、羨ましさを込めた視線を川原さんに向けた。
口角を上げて、穏やかな雰囲気で何かを思ってる。きっと、彼女の事だろうな。
見た目は静かで落ち着いた川原さんの心の中には、彼女への温かい想いが溢れているんだとわかる。
彼女が私の作ったウェディングドレスをを着て結婚式を挙げたいと言っている事を、本当は納得してなくて、おそらく嫌だと感じているはずなのに、そんな自分の気持ちを抑えてまで、私のウェディングドレスを彼女に着せようとしているなんて。

「彼女……愛されてますね。いいな……」

恋人から、大きな愛情に包まれている彼女が、羨ましい。
誰かの愛情に包まれるなんて、私には小さな頃から無縁だったから。
体の奥に隠している寂しさが溢れそうになるけれど、うまく隠して、ふふっと笑った。