「残すなら、俺食うけど?」
食べる手を止めたままぼんやりとしている私に、聞いてくる央雅くん。
言うが早いか私の残していたラーメンを自分の手元に寄せると、おいしそうに食べ始めた。
「ほんと、うまい。ラーメンってあまり食べないけど、また食いにくるよ。
結乃を送るついでにしょっちゅう寄りそうだな」
「良かった。私も初めて来た時に、あまりにもおいしくて感動しちゃったもん」
落ち込みそうになっていた頭をすっきり切り替えるように明るく笑った。
私の残したラーメンを、央雅くんは本当においしそうに食べてくれる。
それを見ているだけで、さっきまでの切ない感情をどこかに隠してしまいたくなる。
まるで、つらい事から目をそらすような自分の気持ちが、さらに重くのしかかってくるけれど。
「芽依ちゃんも連れてきたら喜びそうだな」
満足げな央雅くんの声に、私の心は傷つく。
そして、央雅くんが私の側にいて大切にしてくれる理由を、しっかりと認めなきゃいけないと思う。
ううん。わかっていたのに、それを認めていなかったのは私自身なんだ。
芽依さんの話題が絶えず出る理由。そんな時に、央雅くんがつらそうな表情を浮かべる理由。単なる私の想像にすぎないけれど。
きっと、正解、だと思う。
央雅くんにとって私は、芽依さんの代わりなんでしょ?
央雅くんに気付かれないように、ぐっと涙をこらえた。
噛みしめた唇が、痛くてたまらない。

