「芽依さんも夏基さんも、いつも私の事を気にかけてくれて嬉しい」

私のこの言葉に嘘はない。
芽依さんも夏基さんも、私と知り合ってからずっと、私の閉ざしがちな心をほぐすように付き合ってくれている。

それに、夏芽ちゃんの育児の合間や、季節の行事にはいつも家に呼んでくれて、まるで家族の一員であるかのように、私を気遣ってくれる。

大きな段飾りのひな人形を見て感激して泣いたのも芽依さんのおかげ。
七夕の短冊に本気のお願いを書いたのも、芽依さんが信じる気持ちを教えてくれたから。
誕生日は単なる生まれた日ではなくて、生まれた事を感謝するべき日だと諭してくれたのも……。

私にとって芽依さんは、憧れであり目標であり信じられる数少ない人。

大好きだと簡単な言葉では片付けられない大切な大切な人。

きっと、これから先もずっとこの思いは変わらない。

央雅くんにとっても、芽依さんは大切なお姉さんだとわかる。
表情や言葉全てに芽依さんへの愛しさが滲み出ている。
芽依さんへの愛情を隠す様子もなく、はっきりと言葉にする姿にも慣れた。

姉に対する弟の気持ちというのは、こんなにもあからさまなものなのかと驚いてしまう時もあるけれど、一人っ子の私には理解できない感情というものが、あるのかな。

そう思って、自分の気持ちを無理矢理納得させてきたけれど。

私と二人でいても、央雅くんの口から、いつも芽依さんの名前が出るのは、やっぱり不自然だと思う。
単に、私と央雅くんの共通の知り合いとして、話題に出しているとも思えない。

私の背後に芽依さんがいて、その幻影に央雅くんは笑いかけてるような気がする。