混み合う店内に通された私たちが、案内されたのはカウンター席だった。
何度も食べているおいしいラーメンだけど、隣の席に央雅くんがいるっていうだけで、普段とは違うお店にいるようで、そして、違うラーメンを食べているように思える。

今まで、男性と二人で食事をする機会がなかったせいか、緊張してしまう。
それでも、央雅君と二人でいられる時間が嬉しくてたまらない。
緊張している気持ちを隠しながら、どうにか落ち着いた振りをしていた。

寒さの中で、お店の外に並んでいたのは15分くらいだった。けれど、並んでいる間中ずっと繋いでいた手の温かさが体中に注がれているように感じていたせいか、あっという間だった。
こうして今温かいラーメンを食べていても、央雅君の手の温かさがまだ私の手に残っているように感じる。私と央雅君の距離が近づいたような照れ臭さを央雅くんに気付かれれないように、一生懸命食べた。

他人との距離が小さくなる事によって、不安だけではなく嬉しさも溢れるという事や、楽しくてたまらない事があると、地に足がついていないふわふわした感覚に包まれるんだと、初めて知った。

「あ、芽依ちゃんが、結乃に渡すクリスマスプレゼントは何がいいかって悩んでたぞ」

私よりも早く食べ終わった央雅くんが、思い出したように呟いた。
その明るい声を聞いた途端に、自分の中に溢れていた温かい気持ちが、少し小さくなったような気がした。

「芽依ちゃんは、結乃の事が気になって仕方ないみたいだな」

「そんな事ないと思うけど……」

芽依さんを思い浮かべているに違いない央雅君は、口元を緩めて本当に優しい顔をしていた。