当たり前のように、あっさりとそう言う央雅くん。
私のバイトのシフトを央雅くんのバイトに合わせて調整する事自体、不自然だとは思わないのかな。
最初にそれを聞いた時、私は驚くばかりで何も言えなかった。
小さな頃から周りに決められて、指示されるがまま人生を送ってきた私は、央雅くんの言葉にも疑問を口にする事なく、ただ受け入れただけだった。
それでも何度か、どうしてバイトのシフトを調整してまで私を家まで送ってくれるのかを聞こうと、口にしそうになったけど。
私達が一緒にいられる時間の殆どは私のバイトが終わってから家までの短い時間だけだから、その大切な時間を手離すことになりそうで怖くて聞けなかった。
でも、もしもこれから一緒にいられる時間が増えて、バイトの帰り道以外にも会えるのなら、聞けるような気がする。
それは、『私たちの関係は一体何ですか?』
と聞く事と同じ意味を持つように思えて、かなりの勇気が必要だとも思う。
今の私には、どんな答えでも受け止められるっていう確固たる自信はないから。
聞くのが怖くてたまらない。
央雅くんに出会って間もない頃の、央雅くんに気持ちが傾く前の私なら、聞く事が出来たかもしれない。でも。
央雅くんを好きになってしまった今は、単純に怖い。
不安と臆病な気持ちばかりが体中に溢れて、聞きたい事も聞けない自分へと変化してしまった。
そんな曖昧な関係だけど、こうして央雅くんから食事に誘われて、また会えるんだと思うと心は弾んで、嬉しいと思う気持ちを抑える事はできなかった。

