「結乃」
ふと聞こえた声に、はっとして入口を見ると、どこか無表情な央雅くんが立っていた。
ジーンズに革のコートを羽織っている長身は、店内のお客さんの視線を奪っていて、特に女性のお客さんはあからさまに央雅くんを見つめている。
そんな視線に構うことなく私だけを見ている央雅くん。
バイトがある日には、私をお店まで迎えに来てくれて、家まで送り届けてくれる。
遅い時間になってしまうせいか、央雅くんが私の部屋に上がることは滅多にないけれど、家まで送ってもらえる短い時間は央雅くんとの距離が少しずつ近づいていく貴重な時間だ。
それに比例して、私の気持ちも央雅くんにぐんぐん引き込まれていく。
私が不安に思うタイミングを与えないくらいにぐんぐんと……。
けれど、いつもなら優しい笑顔でお店に来てくれるのに、今日の央雅くんはどこか違った。
歪んだ口元はかたく結ばれていて、お店の入り口にもたれている体からは怒ってるような暗い雰囲気が滲んでいる。胸元で組まれた腕が、尚更央雅くんの視線を鋭くしている。
「……央雅くん……え?もうそんな時間になってる?」
慌てて腕時計を見ると、閉店の時間まであと5分だ。
颯くんと話していたせいか、そんなに遅い時間になっていたって気づかなかった。
「ごめんなさい。閉店までもう少しだから待っててくれる?」
「じゃ、外で待ってるから」
「あ……」
謝る私をちらっと一瞥すると、央雅くんはそれ以上何も言わず外へ出た。
いつもなら見せてくれる優しい笑顔のない央雅くんに戸惑っていると、
「俺らでやっておくから先に上がっていいよ。終電あるんだろ?」
気遣うような声の颯くんは、
「……俺が送っていきたいんだけどな」
そう言って肩を竦めた。
ふと聞こえた声に、はっとして入口を見ると、どこか無表情な央雅くんが立っていた。
ジーンズに革のコートを羽織っている長身は、店内のお客さんの視線を奪っていて、特に女性のお客さんはあからさまに央雅くんを見つめている。
そんな視線に構うことなく私だけを見ている央雅くん。
バイトがある日には、私をお店まで迎えに来てくれて、家まで送り届けてくれる。
遅い時間になってしまうせいか、央雅くんが私の部屋に上がることは滅多にないけれど、家まで送ってもらえる短い時間は央雅くんとの距離が少しずつ近づいていく貴重な時間だ。
それに比例して、私の気持ちも央雅くんにぐんぐん引き込まれていく。
私が不安に思うタイミングを与えないくらいにぐんぐんと……。
けれど、いつもなら優しい笑顔でお店に来てくれるのに、今日の央雅くんはどこか違った。
歪んだ口元はかたく結ばれていて、お店の入り口にもたれている体からは怒ってるような暗い雰囲気が滲んでいる。胸元で組まれた腕が、尚更央雅くんの視線を鋭くしている。
「……央雅くん……え?もうそんな時間になってる?」
慌てて腕時計を見ると、閉店の時間まであと5分だ。
颯くんと話していたせいか、そんなに遅い時間になっていたって気づかなかった。
「ごめんなさい。閉店までもう少しだから待っててくれる?」
「じゃ、外で待ってるから」
「あ……」
謝る私をちらっと一瞥すると、央雅くんはそれ以上何も言わず外へ出た。
いつもなら見せてくれる優しい笑顔のない央雅くんに戸惑っていると、
「俺らでやっておくから先に上がっていいよ。終電あるんだろ?」
気遣うような声の颯くんは、
「……俺が送っていきたいんだけどな」
そう言って肩を竦めた。

