カウンターにつけられているのは、ベージュの無地に、白いレースが縁どられているカフェカーテン。
同じ生地でミトンやティーポットカバーとか、かなりの数の物が店内に溢れてる。
私も気に入ってるそれらは、可愛いし手触りもいい。きっと買ってきた物なんだろうと思ってたけど、加賀さんの手作りのようだ。
「まさか、全部?」
そんな小物達を視線で指すと、颯くんはあっさりと頷いた。
「加賀さん、大きな物は作れないけど気分転換に小さな雑貨とかはよく作ってるみたいだよ。俺の姉貴が手芸ショップをやっていて、良く材料を買いに行ってるらしい。あ、知ってるかな、駅前の『ほのぼの屋』っていう店なんだけど」
「あ…知ってる。私もよく行くし、学校の生徒のほとんどは常連だと思う」
「そっか。まいどありがとう」
驚く私に、嬉しそうに目を細める颯くん。
それだけでお姉さんと仲がいいんだろうって想像できる。
「姉貴が趣味でやってるような店なんだ。身近に常連さんがいるとホッとする」
柔らかい笑いは、『ほのぼの屋』の店長さんと似ている。
今まで全く知らなかったけど、意外な繋がりを感じて嬉しくなる。
「姉貴に結乃ちゃんの事言っておくよ。多少サービスしてくれるんじゃないかな」
「そんな…いいですいいです」
私は慌てて首を横に振る。
気を遣ってそう言ってくれても、申し訳なくて頷くわけにはいかない。
ただでさえ、質のいい生地や材料を手頃な価格で売ってくれるお店なのに。
これ以上のサービスなんて申し訳ない。

