「どうした?」

「え…あ、ごめんなさい」

「……考え事?」

「いえ、大したことじゃないんです……」

いけないいけない。バイト中だった。
もうすぐ閉店だという時間帯。店内のお客さんも少なくて、既にオーダーストップもお知らせ済み。
カウンターの中で気持ちが緩んでしまっていた。

「ラストまでだから疲れるよな。夕べも遅くまでやってたのか?」

傍らにいる颯くんが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。

「課題、大変なんだろ?」

「はい…。今日提出だったんで夕べはあまり寝られなくて。
もっと手際よく作れるといいんですけどね」

軽く笑いながら答えると、颯くんは私の顔をじっと見て

「目の下、クマできてるし。今日はさっさと寝ろよ」

「はい、ありがとう…。そうします」

ふっと小さく笑った颯くんは、店内に飾ってあるクリスマスツリーに視線を投げながら、

「今年は青なんだな」

「そうですね」

二人で見るツリー、電飾に青を使っていて煌めいている。
毎年専門の業者さんが装飾に来てくれる。
ニメートルは超える大きなツリーは盛りだくさんの飾りがちりばめられていて、見ているだけでわくわくする。

「本当、綺麗ですね」

外からも綺麗に見えるように窓際に据えられたツリーは、毎年メインカラーが決まっていて、それに沿って店内も装飾を変えている。
今年は加賀さんの希望で青をメインにクリスマスの雰囲気で店内は彩られている。

「加賀さん、好きだからな。クリスマスとか行事ごと」

「…ですね」

ふふっと二人で笑い合う。
もともとインテリアが大好きな加賀さんの趣味に溢れた店内にいるだけでわくわくする。最近も、そんな店内の取材に雑誌社の人が来た。

「俺の姉貴の店にもよく来るらしいし」

「お姉さん?」

苦笑しながら呟く颯くんは、カウンターのカフェカーテンを指さしながら。

「このカーテン、、姉貴の店で買った生地で加賀さんが作ったんだ」