大学では相変わらず、課題の提出や試験準備で忙しくしている。
好きで選んだ大学だし、他に得意なものもない私にとっては、服を作る事が唯一自信を持てるもの。
とはいえ、服を作る事が私の将来を支えるものだとは思えないし、そうする事に抵抗もある。
好きな事は好きなまま趣味として楽しみたい気持ちが強い。
私が作った服を誰かが楽しい気持ちで身に着けてくれればいいし、作っていく過程が大好きだから。
大学生でいられる間はその軽い気持ちだけで毎日を過ごせる。
思いもよらなかった父の登場によって、昔私が望んでいた今を過ごしている。
私を支えてくれる父に感謝はしているけれど大学を卒業した後は父とのかかわりに距離をおきたいと思っている。
私が今住んでいる家だって父が用意してくれたものなのに。
生活費だって父が面倒を見てくれているのに。
小さな頃の悲しみを忘れられなくて、歩み寄ろうとしてくれる父を受け入れられないまま、そして、父に冷たい態度をとりながらも父からの援助を受けている自分の立ち位置がよくわからない。
大学を卒業してからの事を考える機会が増えるにつれて、父と私の関係や、父に対する自分の本心が、よくわからなくなっている。
今までなら、そんな事を考える事もなかった。
ひたすら毎日を生きるだけで、付随的な喜怒哀楽からは縁遠かった。
思いがけず、最終審査に残ったドレスによってもたらされた周囲の変化のおかげなのか、自分の中で揺れ始めた気持ちのなだめ方がわからないまま、今までになく戸惑っている。
そして、そんな戸惑いが、嫌ではない、と思えるのは多分。
私がこれまで閉ざしていた心を開き、変わろうとしているからかもしれない。

