慌ただしい変化の渦中で戸惑いながらも、週二回ほどのバイトにはしっかりと通っている。
別にお金に困っているわけでもない。
弁護士の戸部先生を通じて父から渡される毎月の生活費は、かなり余裕がある。
とりあえず銀行に預けているけれど、毎月の残高は増えていくばかり。
必要なものは無理せずに買っているし、外食だって多い。
それでも余るほどのお金は、私には使いきれないし望んで使おうとも思わない。
できるなら、私がいた施設に寄付したいくらい。
だから、バイトをする必要はないけれど、学校にしか自分の居場所がないのも寂しいなと思うのと、店長の加賀さんが魅力的で通っている。
最近はラストまで入る事も増えて、忙しさも右上がり。
それでも人と触れ合う事に少しずつ抵抗がなくなっていく自分が嬉しくて続けられる。
馴染みのお客さんも増えて、挨拶くらいなら気軽に交わせるようになってきた。
だから、バイトに行く日は気分も軽くて明るい。
それに。
ちゃんと来てくれるから。
バイトの日は迎えに来てくれる央雅くんと一緒に帰る時間が楽しみになっている。
央雅くんも週に何度か知り合いのお店でバイトをしているらしいから、私とバイトが重ならないように加賀さんと勝手に打ち合わせをしていて、いつも私のバイト終わりの頃に迎えに来てくれる。
『無理しなくていいよ』
と私が言っても、肩を竦めて
『他の男に送ってもらいたいわけ?』
と少し意地悪な声でじっと見つめてくるから、それ以上何も言えなくなる。
繋いだ手を意識しながらも、央雅くんの体温を直接感じる事が嫌じゃなくて。
家までの30分くらいが長いようで短いような、足元が浮いてる感じの不思議な時間…。

