揺れない瞳



そんな事なんてことないように、央雅くんは、自然な仕草で私の前に置かれている皿を取り上げた。
私の食べ残したお好み焼きを、気にすることなく食べ始める。
既に央雅くんは自分のお好み焼きを食べ終わっていて、そのうえ私の残してものまで食べてくれるなんて、相当お腹が減ってたのかな。

「今日、大学の授業が忙しくて昼食べてなかったんだ」

じっと見つめる私の視線に気付いたのか、箸を動かす合間に教えてくれた。
納得。

それにしても、やっぱり男の子って、よく食べるんだな。

「大学の授業って、お医者さんになるための勉強?」

「ん……まあ、医学部だし。両親も医者だから医者を目指すのって自然だったんだ」

私の質問に苦笑しながらも、ちゃんと答えてくれる彼に、思いがけずほっとする。

「前に芽依さんが、『私の家族はみんな医者なの』って言ってたけど、それって本当だったんだね」

何気なくそう言った私の言葉に、微妙に表情を歪めて反応した央雅くんは、ちょっと苦しそうだった。

私、言ってはいけない事を言ったのかな……。
央雅くんの様子にすごく不安な気持ちになった。