力なく首を横に振る。 そうじゃない。時任君じゃないんだよ。だからそんな顔をしなくてもいいの。 そう言葉にしなくても、すぐにその理由を察してしまったみたい。 「矢柴、か」 「……」 苦い顔をして、ぽつりとつぶやく時任君。 なんとなく、慎吾の名前は禁句っぽい雰囲気だったのに、あえて言わせてしまったことに罪悪感を覚えた。