最低王子と小悪魔女


 不意にガシャン、と耳のすぐそばで金網をつかむ音がした。
 驚きに身体をこわばらせて見上げると、慎吾があたしの背後から、両腕で囲うようにして立っている。


「な、なにを?」


 うかつに合わせてしまった視線がそらせない。

 いつもの距離。
 いつも冗談を言い合う距離にある慎吾の顔は、今は怖いくらい真剣で、茶化したり誤魔化したりする余地がどこにもなくて。