「なにボーっとしてんだよ、波月。らしくないなあ」 「うるさいわね。あんたと違って、あたしには悩みとかいろいろあるの」 「――時任に告られたこと?」 スッと笑顔が消える。目を細めたまっすぐな視線に、あたしは背筋が冷えるのを感じた。 ここ半年、一度も見せたことのなかった、本気の顔。