『男の子だって、泣いてもちっとも変じゃない』
 そう当たり前のように言ってくれた、幼なじみの子を思い出す。

 遠い昔、泣き虫だった俺の手を引いてくれた、どこかたくましい女の子。


 ――俺はその子が、
 波月のことが、大好きだった。


 ちっちゃな波月は、俺が持っていないものをたくさん持っていて、いつもまぶしいくらいにキラキラしていた。

 記憶の中のその子は、笑顔と同じくらい怒った顔も多かったけど、お説教は俺を一人前の男にしようっていうしようっていう、その子の努力の証でもある。

 ……やっぱり怒りっぽかったのも、あるんだろうけど。