屋上を足早に離れて、無意識に足を向けていたのはここだった。

 いつか吹奏楽部の子に教えてもらった、もうほとんど使われていない音楽準備室。
 古ぼけた楽器や音楽家の肖像画が並ぶこの場所は、なぜだか寂しさを思わせた。


 念のため内側から鍵をかけて、手近な椅子を引き寄せる。

 座って、大きく息を吐くと、たまっていたものがせきを切るようにあふれ出した。


(まいったな。これじゃまるで失恋だ)


 告白もしていないのに、終わってしまった恋。
 それに自分だけならまだしも、波月まで傷つけてしまった。

 これじゃ、泣くしかないよな。波月だけは、どれだけボロボロになっても絶対守るんだって、心の中で誓ってたのに。