最低王子と小悪魔女


「波月、なにを――」

「いつもみたいに、他の子みたいにこっぴどくフって、傷付けて泣かせられたらそれで気が済むの?」


 言った。とうとう言ってしまった。

 傷ついたような顔。慎吾のそんな顔を、かつてあたしは見たことがある。


 半年前、夏休みのあの日。ビンタして、なんであんなことしたのって責めた時。


 そしてその時と同じように、慎吾はすぐに口の端を持ち上げて薄く笑む。


「……へえ。波月は俺より、くだらない噂を信じるんだ? 幼なじみの俺よりも、他人の言葉を信じるんだな」