最低王子と小悪魔女


 お願い、違うって言って。
 勘違いだって。そんなことないよっていつもみたいに笑って。

 何の悩みもなさそうな、あの幸せそうな笑顔で。


「ねえ、慎吾。あんたはいったいどうしたいの?」

「……波月?」


 フェンスから背中を離して、慎吾はあたしに向き直る。
 その顔に影が差す。

 でも言わずには、確かめられずにはいられない。ずっとこのままじゃ、冗談だけじゃいられないんだよ。


「あたしがあんたを好きだって言ったら、それで満足するの?」