最低王子と小悪魔女


 余の中広しといえど、『耳をつまんで引っ張る』なんて古典的な方法で、あの矢柴慎吾を引っ張っていける奴はあたしぐらいのもんだ。

 まるで一昔前のアニメみたいな状況にありながら、それを気にも留めない能天気さで慎吾はぽそり。


「うーん、これってデジャヴかなー」


 珍しく同意見だな。
 うん、あたしもそんな気がしなくはないぞ。


 ――しなくはないんだが、それを認めたら、あたしらは毎回おんなじよーなことをしてるってことになるから、すげー嫌だ。