最低王子と小悪魔女


 普段、ちょっとやそっとで動じない花那がここまで取り乱すなんて、きっと大事件なのだろう。とびきりよくない方向に。

 ――そしてあたしは、それに心当たりがあった。言うまでもない、慎吾の話。


「そんなのんびりしてる場合じゃないって! ホントなの?! あの噂!
慎吾君と時任君が、波月を賭けて勝負したって!」

「事の経緯と動機と、実際に賭けた内容はとんでもなくしょぼいけどね。一応本当っぽい?」

「ぽい? じゃないよ! 大変なんだよ、慎吾君がとうとう波月を狙ってるって、みんな大騒ぎなんだから! 時任君が波月に告白したもんだから、嫌がらせにだとかヤキモチでだとか――!」