でも、自分からは何も言い出さないから、あたしに挨拶していけということなのだろう。
 あたしは意を決して、口を開いた。

「……時任君、あの……」

「ごめん、黒木」


 謝ろうとしていたのに、逆に謝られてしまう。時任君は何も悪くないのに。

 胸の奥から、苦いものがこみ上げてくる。
 それは罪悪感だった。


「また明日な」

「うん、また明日……」


 それだけ言うと、また慎吾が腕を引く。
 後ろ髪を引かれながらも、あたしたちは体育館を後にした。