その翌日。

会社につくなり、
「藤田さん、ちょっといいかな?」

ストーカー課長に呼び出された。

隣に使っていない会議室には、課長と2人きり。

「何の用ですか?」

私が声をかけると、
「実は俺……結婚してないんだ」

そう言って課長は、左手を見せた。

左手には、いつも身につけていた指輪がない。

「あの指輪は、女よけだったんだ。

自意識過剰のナルシストみたいに聞こえるかも知れないけどな、取引先の女上司がしつこくて、それで結婚したって言うことにして、指輪を身につけてたんだ」

「…そうだったんですか」

彼の指輪には、そんな秘密があったんだ。