くちばしにチェリー

「けど、奈菜さんのことは知りません。

アタシ、乃南さん――彼女に秘密を抱いたのは、今回が初めてです。

秘密を抱かざるを得ない状況って、つらいんですね。

いつバレるのかヒヤヒヤで、そのせいで乃南さんが傷つかないか心配で、そのうち乃南さんが……アタシの手から離れるんじゃないかと思うと」

Mは、苦しそうだ。

傷ついているみたいに。

そりゃ、好きな人に隠し事をしてる訳だもん。

苦しまない訳、ないよね?

「ねえ、Mさん」

だからもう、解放してあげよう。

「やめませんか?」

この秘密を、終わらせよう。