くちばしにチェリー

彼は呆れたと言うように息を吐いた。

うわあ、憂いを帯びたその顔、すごく素敵。

もちろん、さっきの甘くて妖艶な笑顔も素敵だけど……はあ、真智子の言う通り、極上男だ。

「彼は奥様がかわいそうだと、思わないんでしょうかね?」

遠くを見るように投げたその目にも、キュン。

「微塵にも思ってないと思いますよ」

私がそう言うと、
「なら、制裁しましょう」

彼はマフィアのボスのような笑みを浮かべた。

ああ、もうダメだ…。

その笑顔は、どんな強い銃弾もかなわない。

「ぜひとも、やりましょう。

藤田さん――ああ、許嫁なのに名字と言うのはおかしいですね」