荷物を持ってもらい、イリアに先導されてバスを降りる月。

ステップを降りようとした所で。

「月様、少々お待ちを」

イリアは月を制し、ステップを雑巾で入念に拭き掃除、その上で赤い絨毯を敷いて。

「さぁどうぞ、お足元お気をつけ下さいませ」

ネコミミをピコピコ揺らして恭しく頭を下げる。

某お嬢様の完璧執事兼ボディガードもかくやという有能ぶりである。

というか赤絨毯などどこから持ってきたのだろう。

『あの白髪の子はどこの令嬢なのかしら?』という一般客の注目を浴びながら。

「……」

月は困惑顔でバスを降りた。