「いーやーだ!なんで私が千歳(ちとせ)なんかと同じ班にならなきゃいけないのっ!?」

さっきまで口の中で転がしていた飴玉を強靱な歯でガリガリと噛み砕きながら、幸多万里(こうだばんり)はあからさまに迷惑そうな顔をして訴えた。

「いや、だって千歳ちゃんは不幸体質だから、幸福体質の万里が近くにいないと……」

クラスメイトのアリスカ・テフレチェンコがやや押され気味に述べる。



アリスカの言う事は正論だった。

万里の双子の妹、幸多千歳は、人並み外れて運のない不幸体質の持ち主だ。

彼女が出掛ければほぼ確実に大雨が降り、彼女がスポーツをすれば二回に一度の割合で大怪我をする。

彼女が料理をすれば火を使わなくても小火騒ぎが起こり、彼女が植物を育てれば最初の朝には枯れている。

もちろんジャンケンで勝った経験などゼロ。

それに対し万里は、誰もが羨む幸福体質少女。

彼女が買ったアイスは必ず当たるし、ふらりと入った店は必ずセール中。

頭は悪いが、試験のヤマをはれば常に的中。

勝負事では負け知らず。

福引きでは一等以外取った事がない。



因みに今挙げた例は、ほんの些細なものである。

厄介なのは、どちらも、本人だけでなく近くにいる者にまで体質の影響が出てしまう事だった。