夏の夜空。


輝く星と、綺麗な月が見守るなか、花火は舞った。


儚く消えてしまうと分かっていても、一つ一つ、立派に。



きっと、私たちのなかでは、ずっと心に残り、色あせることはないだろう。




「もう終わりかー。ちょっと寂しいね」

ベランダに出て、夜風に当たる。

辺りは静まり返っていた。

「僕、初めてだったんです。夏祭りも、花火も」

「えっ、そうなの?祭りとか嫌いなタイプ?」

「嫌いじゃないですよ」

「じゃあ、なんで?」

凜はどこか悲しげな瞳で微笑んだ。

「秘密です」

「えーー!?」

「個人情報なんでお教えできません」


追求しようかと思ったけど、やめた。



凜の横顔が、今日眺めた花火が散る時のように、あまりにも切なく、儚く見えたから。