朝を迎え、由紀は彼より先に目を覚ました事に胸を撫で下ろし、慌てて洗面所へ向かった。

一種の恐れにも似た心境で、ゆっくりと鏡を覗いてみたが、そこにはいつもと変わらぬ綺麗な顔があった。
思わず腰が砕けそうになるほどに安堵した。

「どうかした?」

彼が部屋から問い掛ける。
その声で我に返った由紀は、慌てて部屋に戻った。

そこにあるのは、昨夜と同じ優しげな彼の姿と、その彼と一夜を共にしたと言う事実。
由紀はまだ夢の続きが醒めていないのを実感し、新たな人生を与えてくれた何者かに、心の中で感謝を捧げるのだった。