お洒落に興味がない訳ではなかった。
ある時、衝動的に入ったお店で、店員に勧められるまま、断ることも出来ずに買ってしまった…それがこの服である。

店を出た途端に、とても似合いますよとか、凄く綺麗ですよ等とお世辞を並べたその口で、店員達は馬鹿にして笑っているのだろう。

そんな疑心暗鬼にも捕らわれたものだが、今この状況に於いては、感謝さえしたい程であった。

自分には不似合いだと思い、袖を通すことなく眠っていたこの服も、今日のこの顔にはとても良く映える。

家を出る頃には、由紀はすっかり高揚していた。