暫く見とれてしまったが、これまで由紀は苦難の道を歩んできている。
喜びに我を忘れる事はなかった。
疑心暗鬼が根付いているのだ。
ふと注意書きの内容を思い出した。

装用時間を超えたら、どうなるのだろうか?
そして、もしこのまま取れなかったら…

急に恐ろしくなった。
自分でも馬鹿馬鹿しいと思う発想なのだが、映画や小説などの世界では、このように禁止事項を破った結末について詳細が記されていない場合は、決まって取り返しのつかない事態を招くものである。

とても現実的ではない。

だが、この奇跡のような出来事を思えば、不自然な発想とは言い切れない。

慎重に顔に手を伸ばす。

しかしすぐに、予想は覆えされた。
実にあっさりと外れる。
安堵の息を吐いた由紀は、疲労も手伝ってか睡魔に襲われてきたので、今日は早めに就寝する事にした。

今夜は良い夢が見れそうだ…