「…………………」



静まり返る部屋のなか、無言の重圧を葉名におみまいする仁子




「お姉ちゃ〜ん!」



葉名が縋(スガ)りつくように
仁子の足を抱きしめる



「はいはい。分かったから!」



そう言って葉名を離し、散乱しているピンクのケースへと手を伸ばし、いとも簡単に1つのピンを取り出した



そして、慣れた手つきで
葉名の前髪をふわっと斜めに流し、手に持っているピンで留めた





「うん!かわいい!!」



満足げに笑顔で言う仁子の姿を見て



「ありがとう!お姉ちゃん!!」


同じく笑顔を見せた葉名は、鏡で
その姿を確認する事なく



携帯と仁子のリボンと通学バッグを手に
部屋を出た



「いってきまーす!」


その声と共に、玄関のしまる音が聞こえた